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NHK囲碁講座テキスト

三村智保(みむら ともやす)

2014年7月の囲碁フォーカスで特集される。一言でいうとまじめでいい人。

師匠は藤沢秀行。十代、そして藤沢のもとから離れる二十代後半まで、常に藤沢の言葉、アドバイスが負担になっていたらしい。 対局中に打つ自分の一手であっても、「これは先生にひどく怒られてしまう手なのではないか」と考えることがあったという。 師匠の高い理想についていけない日々。もっと気楽にやれればいいが、そういう性格ではない。 入段してからずっと師匠に評価されたいし認められたいと思っているが、それがかなわない。勝ちたい、結果を出さなければならないと思えば思うほど勝てない。評価の目を気にしすぎていた。

二十代後半、「師匠のもとを離れたほうがいいんじゃないか」という決断をついに下す。藤沢から物理的にもいったん距離を置くことで、師匠からの重圧から徐々に解かれていく。 楽しく一生懸命やろうという気持ちと共に、碁を打つのが楽しくなった。全力で精一杯やってついてくるのが結果。

ふっきれた三村は師匠から離れて6年後にNHK杯で優勝。タイトルがとれて嬉しかったに違いないが、本人は「周りを喜ばせるための機会だった。」と当時をふりかえる。

NHK杯優勝者が手にするアジア杯の出場権。だが、三村は大会にでるのが嫌で嫌で仕方がなかったという。 誰か他の日本人が出て勝ってくれればそれでいい。自分が当事者になりたくない。アジア杯は絶対に勝たなければならない大会と自分に相当なプレッシャーをかけていた。 そのような重圧の中、三村は準決勝で強敵の韓国代表イ・チャンホから勝利。イ・チャンホに勝てるとは思っていなかったようで、三村は「いい思い出になった」と述懐。

結果を怖がり、自分の能力を怖がっていた若い頃。藤沢秀行という巨大な呪縛から放たれた三村。「これから、もっと楽しんでやれる気がする。」

「全てが修行だ。」という藤沢秀行が残した言葉。三村は自分が開催する囲碁教室で子供に囲碁をおしえることも修業の一つとしてとらえている。