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NHK囲碁講座テキスト

【囲碁と寺】歓喜院(かんぎいん)

縁結びの神様として知られている歓喜院は埼玉県の熊谷市にあるお寺。本堂の聖天堂(しょうでんどう)は国宝になっている。1179年に建立されて、18世紀半ばに再建された。

再建から約250年の平成14年に修復工事が開始され、平成23年に完了。聖天堂の外壁面にある古びた彫刻には、修復により華麗な彩色がほどこされ、江戸中期の文化遺構に再び息吹が吹き込まれたように思われたが、問題が1つ残った。

壁面には、布袋、恵比寿、大黒天の七福神の3人が囲碁を打っている彫刻がある。神も囲碁を打って過ごせるくらいに平和な世の中だということを表現しているのだが、250年間風雨にさらされた盤面は全くわからなくなってしまっていた。

神々が楽しく打っている囲碁の盤面に碁石がない。寺は途方にくれたが、このピンチを救ったのが日本棋院熊谷支部の新井三郎。この対局にふさわしい棋譜を用意してくれた。

新井が選んだのは、道策全集第一巻に掲載されている約300年前の棋譜。1697年(元禄10年6月26日)、熊谷本碩(ほんせき)と本因坊道策の一局。熊谷が黒番。時代も棋譜も申し分ない選択をしてくれた新井に寺は大満足した。

ちなみに、彫刻では黒番の恵比寿がまさに打とうとしているのが115手目。「いいご縁」がありますように。また、2012年5月28日(月)と29日(火)に行われた第67期本因坊戦の第二局は歓喜院が舞台となった。

(2013年11月囲碁フォーカスより)